クインテットビショップの還幸

第3章 狡猾な愚者――鎖は絞められ憐れな神を括れ



先王、アーデルベルトが失踪した二日の後、隣国スウ゛ェロニア帝国より正式要請が出された。

スウ゛ェロニア王子と退位せし王女との政略結婚を正式に申し込むそれに、ベルンバルト側はほぞを噛むことになる。

錯乱の淵にあるアーデルベルトに告げなかったこと、彼女を逃がしたことは、恐らく最善だった筈だ。

しかし、添えられた条件――それは、本人に伺いすら立てられぬ状況に追い打ちをかけた。

《聴き入れられぬ場合、即時武力抗争もじさない》

示されたそれは――あろうことか、当該国のスウ゛ェロニアと、ベルンバルト最大の同盟国、ネインクルツの連名で啓示されたのである。
 
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